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事業承継M&Aというインフラ

M&A≠出口戦略  事業承継M&Aという言葉がいつの間にか市民権を得た感がある。 後継者不足が枕詞でありネガティブなパブリックイメージがついて回る印象はまだぬぐえない。


  弊事務所に来る相談についても、ものすごく悲壮感をまとわせる内容のものも少なからずあり、市井のM&AのイメージはNHKで鷲津さんが植え付けた異次元の世界観に支配されていると感じる。


 事象承継M&Aの相談を受けて思う事は「出口戦略」なく事業を始めるという文化だ。 かつて監査法人・コンサル会社にいたときは「株式公開コンサル」名目で営業に行き、帰りに「M&Aコンサル」の提案書の宿題を頂く事が少なからずあった。


 ベンチャーなりの経営者は、アイデアを事業化して成功した後の畳み方を常に念頭に置いている。自身の出資額に価値が付加されたら売却して資産を得る。 そしてそれを元手に新たにビジネスを始める。そういったブルーノサンマルチノか回遊魚かみたいな属性の超人であり、経営も常に株価を睨んだ文法を駆使している。そんな彼らは株式を高く評価してくれるのであれば株式市場であろうがなかろうが関係はない。


 かたや事象承継である。 日々、従業員と取引先、地域社会のために汗水流して働くという(働く歓び)を承継しようというモチベーションであり、継続ありきの事業であり手放すという考えは生じにくい。出口戦略を考える土壌ではないのだ。 換言すれば出口を目指すM&Aと出口を強制させるM&Aの違いとでも言おうか。



株価は水物  追い立てられるM&Aは出口戦略を想定しておらず、株価を想定した経営が前提にない。 しかしM&Aにあたり株価算定は必要。株式評価の方法は洗練された理論と、なにより真摯で誠実な実務の積み重ねにより体系化されている。


  つまりは実務慣行がありおいそれ無視できるものではない。 しかしその実務慣行は財務会計、管理会計、一定のガバナンスを前提としておりスモールM&Aにかならずしもマッチしない。 かなり端折った算定方法で案件を進めるしかない。


 「今回のコロナ禍。世間の圧力で営業の自由が毀損された結果、数か月もの売り上げを失った訳で数年、数十年の蓄えが綺麗さっぱり失った事業社も多いと聞く。しかも直近の利益はボロボロ。 事業計画も、損益分岐点も、管理会計もない事業社は一時的なイベントの損害がまるで未来永劫続くかのような評価を甘んじるしかない。


 「知らない事により毀損している事業価値」はあるし、この情報の非対称性をし真摯に解決する事が我々アドバイザリの業務とも思う。 抗弁するには蓄積のモニタリングと分析の経験値の累積。そして未来の経営数値の説得力ある説明が必要だ。



板子一枚下は 事業の存続というポジティブな面は間違いなくある。

しかし、その陰に「追い詰められたM&A」の当事者であり、血の涙を流しながら相談にくるクライアントもいるであろう背景を常に気に留めておきたい。 まだまだ序盤のスモールM&A業界。 自身のキャリアを捧げて国難に対応しようとするプレイヤーが集う様相に武者震いしつつ矜持をもち日々邁進していきたい。

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